2016年10月10日

 現在、日下部は埼玉県議会の文教委員長を拝命していますが、教職員が検定中の教科書を教科書発行者から見せられて、謝金を受け取っていた事件、東松山市で県立高校を中退した16歳の少年が、中学生3名を含む5人の少年グループに殺害された事件、全国学力・学習状況調査の結果で埼玉県の小中学生の学力が、依然として下位に低迷している件など埼玉県の教育の抱える課題は枚挙にいとまがありません。

 平成28年9月の文教委員会で教科書会社に対する教職員・教育委員会委員の対応についてガイドラインを作りましたが、上記の諸課題が解決されるよう、自民党県議団・文教部会より、平成29年度予算編成に対し下記の項目を埼玉県教育局に提出したので報告します。


平成29年度予算編成に対する埼玉県教育局への要望事項

1 学校教育全般

(1)「土地」も「資源」もない我国が国際社会で生きて行くには「頭脳」と「人材」の育成が重要である。学校教育には充分な財政措置、人的措置を講じること。特に理数系教育の充実を図ること。

(2)生徒個々のレベルにあったきめ細かな学習を実施するため、習熟度別授業や放課後の補習授業を増進すること。

(3)市町村教育委員会と連携し、土曜日の正規授業を行うことを進めること。

(4)自国の言語・歴史・文化にも精通していないと国際人とは言えない事から、英語教育の強化と並行して、国語と日本史の教育の充実も図ること。

(5)「自由」と「権利」の裏には「義務」と「責任」があり、「義務」と「責任」を伴わない「自由」と「権利」は「我儘」に過ぎないことを道徳教育の中で教えていくこと。

(6) 時代のニーズに応えられる教育指導が出来るよう、耐用年数にとらわれない施設整備・教育機器類等の更新に努めること。

(7)安全で快適な学習環境を整備するため、老朽化の著しい校舎等の大規模改修工事や、設備改修工事などを計画的に実施すること。

2 教職員

(1)教員の資質・能力の向上を図るため、人事評価制度を充実させ、教員採用選考試験の工夫・改善に努めること。

(2)いじめ・非行・不登校に真剣に取り組む使命感の強い教職員の育成に力を注ぐとこと。

(3)倫理観の高い教職員の育成に力を注ぎ、窃盗・わいせつ行為等の不祥事を犯した教職員には厳正に対処すること。

(4)入学式・卒業式には式場に国旗を掲揚し、教職員の起立・脱帽・国歌斉唱の徹底を図ること。

(5)モンスター・ペアレンツと称される保護者等からの理不尽な要求で教職員が疲弊しないよう、教職員が速やかに弁護士等と相談できる体制を構築すること。

(6)教師と子供達が向き合える充分な時間を確保できるよう、具体的な目標を定め、学校・教職員に対する事務的な要望を精選し少なくすること。

(7)奨学金制度の運用を拡充し、埼玉県の教員志望者の拡大を図ること。

3 教科書

(1)教科書採択において教職員・教育委員会委員に対して「検定期間や採択期間は教科書発行者と一切の接触を持たない。また、機会・期間を問わず、一切の金品を受け取らない。一切の供応を受けない。」と定めた本県のガイドラインの遵守を徹底すること。

(2)社会科の教科書の選定に当たっては、自虐史観や偏ったイデオロギーに基づく教科書を排除し、史実に忠実かつ、日本に誇りを持ち、日本人として正しい歴史認識を持てる教科書を採択すること。
県教育委員会が手本を示し、市町村教育委員会に働きかけること。

(3)教科書の選定に当たっては、市町村教育員会の独自性を確保できるように採択区の単独化を目指すこと。

4 幼児教育

(1)幼児期、特に3歳未満の家庭環境が将来の人格形成に与える影響が大きいことから、科学的知見に立った幼児教育を研究し、「親の学習」等の家庭教育支援のための施策を推進すること。

5 小・中学校教育

(1)児童生徒の健全育成を進めるために社会奉仕体験を重視すること。

(2)学校ファーム等体験活動を中心とした食育を推進すること。

(3)発達障害児や外国人児童生徒等が在籍する学校に対し、その支援を充実させること。

(4)日本人全体の読書離れが進んでいるが、読解力は学力向上のための基礎である事から児童生徒の読書活動を推進すること。

(5)学校業務の複雑化に伴い、小中学校等における教頭の学校運営に係る業務負担が増加していることから、校長及び教頭を補佐し、一定の権限を持つ主幹教諭の配置を推進すること。

(6)中学生の進路決定に際しては、県内統一テスト等が不可欠であることから、必要な対策を講じること。

(7)全国学力・学習状況調査の結果、並びに埼玉県学力・学習状況調査の結果を真摯に受け取め、多面的多角的に調査結果を分析し、課題を把握すること。また課題を踏まえて教員の指導力改善、児童生徒の学力向上に生かすこと。

(9)中学校に於いて免許外教科担任が「0」になるよう徹底した策を講ずること。

(10)幼稚園と小学校の連携を密にし、「小1プロブレム(小学校に入学したばかりの1年生が、集団行動がとれない。授業中に座っていられない。先生の話を聞かないなど、学校生活になじめない状態が続くこと。)」の解消に努めること。

(11)小学校と中学校の連携を密にし、「中1ギャップ(小学生から中学 1年生になり、学習や生活の変化になじめず不登校となったり、いじめが増加する現象)」の解消に努めること。

6 高等学校教育

(1)中学校と高等学校の情報交換を拡充し、生徒への教育・進学指導の充実を図ると共に、「高1クライシス(高等学校進学後、学習や生活面での大きな環境変化に適応できず、生徒が不登校に陥ったり、退学したりする現象でケースの大半が高校1年時に集中している。)」の解消に努めること。

(2)本県の中高一貫校が目指す所の魅力と特色ある高校づくりを着実に推進すること。

(3)生徒数の減少に対応して、県立高校の規模・配置の見直しには地域性に十分配慮すること。また、定時制高校の意義をきちんと認識し、配置に努めること。

(4)入学者選抜での合否判定の権限と責任を明確にし、厳正に運用すること。

(5)主権者教育の中で、日本で女性の参政権が認められたのは戦後1945年、米国で黒人の参政権獲得が1965年などの歴史を踏まえて、一票の大切さを教えること。

7 特別支援教育

(1)特別支援学校については、今後の児童生徒の増加や生徒の障害の状況を踏まえて新設、或いは適切な整備を行うこと。

(2)卒業後の自立・就職に向けた教育内容の充実を図ること。

(3)特別支援学校教諭免許を有する正規採用教員による厚い教育実践ができるよう人員確保のための予算措置を講じること。

8 その他

(1)「埼玉県スポーツ振興のまちづくり条例」に基づき児童・生徒がスポーツに参加し、親しめる機会づくりに努めること。また、スポーツ施設や遊具の総点検を徹底させ、施設利用事故の防止に万全を期すること。

(2)いじめ・非行・不登校対策の一環として学校の運動部活動、或いは地域のスポーツクラブを活用すると共に、問題生徒を掌握出来る指導者を確保するための予算措置を講じること。

(3)ゲーム機、スマートフォン等の電子メディアを使用する上での危険性の認識等、メディアリテラシー教育を推進すること。

(4)市町村と連携し、学校その他の教育機関に於いて児童・生徒が「がん」に関する理解を深めるための教育施策を講じること。また覚醒剤を始めとする危険薬物の怖さを知るための施策を講じること。




埼玉県議会・文教委員長、半期を終えて」