5億円の盆栽は必要だろうか?
 5日から始まる12月議会に大宮盆栽組合から提案を受け相川市長がどうしても欲しいという「高木盆栽美術館」の盆栽を5億円で購入する議案が上程される。所有者の高木礼二氏が今年5月に逝去された後、盆栽を遺産として引き継いだ遺族との交渉がまとまった訳だが、私はこの盆栽購入には2つの点から反対している。

 盆栽がさいたま市の重要な文化である事は否定しないが、第1点目は「栃木県の高木さんという人の持っていた盆栽を買って来てそれを並べてさいたま市の盆栽文化といえるのかどうか?」という点である。大宮産の盆栽に5億円出すのなら喜んで賛成するのだが、その日光江戸村的発想に賛同しかねる。また、今回購入する盆栽の中には高木氏が大宮盆栽組合から買った盆栽もあり、大宮盆栽組合は高木氏に売った盆栽を税金で買い戻す事にはならないのだろうか?

 第2点目は道路や下水といった基盤整備がまだまだ遅れている西区の議員としてはやはり税金の使い道の優先順位に疑問符が付く。鑑定評価額20億円とも言われる盆栽を5億円で購入するのは確かにお買い得だが、さいたま市はこの盆栽を展示する箱物施設も建設するのでその年間維持管理費の総額は約9000万円と見積もられている。9000万円という金額はさいたま市全域の私道整備助成金の年間予算と同額である。道路整備の陳情書を提出しても「お金が無い」と言われ、測量の予算付にさえ4〜5年もかかる旧大宮の現状を鑑みれば食事に例えて言うならば「デザートよりも、米をくれ」と言わざるを得ない。

 施設が完成するまでの間の大宮盆栽組合などに有償で維持管理をお願いするとの事だが、100歩譲ってさいたま市の盆栽文化振興のためにこの盆栽を購入したとしよう。その際、施設を造らず、そのまま大宮盆栽組合で管理してもらえば年間約1200万円の出費で済む。毎年9000万円の維持管理費がかかる事が分っていながら、箱物を建設するのはやはり「盆栽文化振興よりも箱物建設」と思わざるを得ない。

 相川市長が新都心のタワーの跡地に建てたいと言ったサッカー博物館の時もそうであったが、この5億円の盆栽購入についても自民党は私を除く全議員、公明党も全議員、民主党も全議員がブツブツ言いながら賛同する様である。公明党や民主党は市民感情を意識してか原案のままでは賛成できず付帯決議を付けたい意向を示している。

 相川市長が「この5億円の盆栽がさいたま市の文化振興にどうしても必要」と考えるなら堂々とその旨を主張し、1年半後の市長選で市民の審判を仰げば良いし、議会も付帯決議を付けなければ賛成できない議案は1回ぐらいは否決して執行部に次の議会に修正議案を提出させるぐらいでありたい。

 市議会はこの問題がメディア報道されると06年10月に盆栽文化振興議員連盟の「盆栽」を削除して文化振興議員連盟と名称変更し、市当局は06年12月議会で美術品等取得基金を廃止し、5億円に積み増した文化財産等取得基金を設置するなど市民に対して何か後ろめたい事でもしているかの様に行動しているのである。






2007年12月2日