第21回参議院選挙の結果について
 第21回参議院選挙の結果は予想通り自民党の大敗であったが、安倍内閣は平成18年9月の発足以降、約10ヶ月間の間に国民投票法を成立させ、教育基本法を改正し、防衛庁を「省」に昇格させるなど歴代の内閣が何年かかっても出来なかった事をやった。小泉前内閣の郵政解散・自民党の衆議院選挙大勝による与党の全体安定多数という置き土産があるにしてもその実績は評価されて良い。

 反与党のマスメディアは「年金記録紛失問題」で安倍政権の責任を追求していたが、国会議員の年金保険料未納問題が生じた時に国鉄をJRに分割民営化した様に社会保険庁を解体・民営化しておくべきであった。民間の保険会社なら「被保険者が保険料を納めていなければ、保険料を納めて下さい」と通知する。この当たり前の事ができない組織を放置した事については歴代内閣、歴代厚生労働大臣、そして与野党の国会議員の責任が問われよう。基礎年金 番号導入の政策判断をした当時の菅直人厚生相(現民主党代表代行)の責任も含めて。

 やや遅きに失した感はあるが、安倍政権は既に社会保険庁の非公務員化法案を成立させており、私は安倍総理は内政面では合格点である思う。ただ、外交については物足らなさを否めない。米国に国防を依存している状況では発言できない事も分るが、過日の米国下院の「従軍慰安婦決議」に日本の代表として何ら反論しないのは「主張する外交」にはほど遠い。また靖国神社には臆する事なく終戦記念日に参拝して頂きたい。

 私は安倍氏が総理になる前に何度かお会いした事があるが、自民党議員には珍しく育ちの良さと優しさを感じさせる人であった。長所と短所は裏表であり、郵政民営化反対議員の復党や、失言大臣を更迭できない事など、逆にこの優しさが国民の目には指導力不足と映っている。戦国武将の毛利元就は「善人には断は下せない」と言っているが、「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」非情さもリーダーの重要な資質の一つであろう。小泉前総理が郵政解散で同じ釜の飯を喰った議員に対立候補をぶつけた様に。

 安倍総理はまだまだ若く、自民党の派閥の領袖や長老議員から「あれこれ」言われると断り切れないのではないかと察する。党内の安倍降ろしの声も大きくなっているが、「最大の敵は内側に居る」のが権力の世界の常である。私は安倍氏が総理を辞職する必要は全く無いと思うが、ここで氏の政治生命が絶たれるのは惜しいので一先ず退陣し、力を貯え4〜5年後に再登板しても良いと思う。

 続投するなら、民主党が参議院の第1党となった今、テロ特措法の延長問題を利用して民主党を分裂させ憲法9条・安全保障を軸とした政界再編を期待したい。民主党が自民党より右から左までの集まりであり、憲法9条・安全保障について挙党一致できない事は周知の通りである。


2007年8月12日