障害者自立支援法に対する
  保健福祉委員会副委員長くさかべの取り組
み】
【はじめに】
 障害者自立支援法が平成18年の4月から導入され、10月から本格施行された。これにより、これまで障害者福祉に於いては所得に応じた負担制度(応能負担)であったのが、所得の多寡に関係なく原則1割負担(応益負担)となった訳だが、運悪く平成18年度の保健福祉委員会副委員長の立場上、様々な障害者団体からの苦情を戴いた。

【我国の国民負担の現状では応益負担に】
 そもそもこの法律は少子高齢化で税金や社会保険料を納める人が減り、福祉を要する人が増える中、国家財政が立ち行かなくなり障害者福祉の受給者にも受益者負担をお願いするものである。

 少子高齢社会では低負担高福祉はあり得ず、高負担高福祉・中負担中福祉・低負担低福祉のいずれかになる事は御理解頂けると思うが、高齢化率15%以上の欧州諸国では国民負担率(税金+社会保険料負担の対国民所得比)は軒並み50%以上であり、消費税も全て15%以上である。高負担高福祉国スウェーデンの消費税は25%である。それに比し日本は高齢化率21%(2005年)に対し国民負担率は35.5%(2004年)で消費税も5%に過ぎず、受益者負担増は不可避である。

 我国の国民負担の現状では障害者福祉に於いても応益負担にならざるを得ず、個人的には「国に於いて消費税を10%に引き上げても福祉の財源を確保すべき」と考える。広く薄く全国民が納税の義務を果たし、且つ贅沢をする者が沢山納税する消費税は極めて公平な税制であり、弱者に厳しいとされる消費税の逆進性も木綿の下着や生鮮食料品などの生活必需品は5%に据え置き、贅沢品には20%という複数税率制にすれば緩和できる。

【さいたま市独自の激変緩和策】
 年金制度に於いても20歳から60歳まで40年間、真面目に年金保険料を納めた人が受け取る老齢基礎年金が66208円であるの対し、保険料を納めず酒ばかり飲んで体を壊した一人暮らしの70歳老人が受ける生活保護給付額が住宅扶助47700円等を含めると月額約13万円という問題があるが、障害者自立支援法に於いても月額負担の上限額(低所得1:15000円、低所得2:24600円)が設定されてはいるものの生活保護の自己負担額は0円なので、下記の如く低所得1・2で頑張るよりも「生活保護を受給した方が楽」という矛盾を抱えている。

 ◆低所得者1:障害基礎年金2級受給者(年金月額66208円)
 ◆低所得者2:障害基礎年金1級受給者(年金月額82758円)
 ◆生活保護:住宅扶助も加えると月額給付は12〜13万円

 低所得層が生活保護に雪崩込んで来た時の市の財政負担を計算すると何らかの激変緩和策もやむを得ず、施設利用者に対しては低所得者1・2と所得税非課税者の負担額の1/2を助成し、施設事業者に対しては利用者定数に応じた定額月払いから日々の利用者実数に応じた日払いになる事によって生じる減収分の1/2を補填する制度を12月補正予算に計上し平成19年1月1日から施行する事を平成18年9月議会で市に要望した所である。

【マスメディアに煽られてはならない】
 少子高齢化による厳しい財政状況で医療保険も介護保険も受益者負担増となっている中、マスメディアの多くは障害者自立支援法の応益負担を非難している。マスメディアは「障害者に対する差別を無くせ」と言いながらその一方で「障害者を特別扱いをせよ」と言っている。
 某新聞に「市の独自軽減策を求める57377人の署名をさいたま市議会議長に提出した」という報道があったが、「負担が多い方がいいか・少ない方がいいか」と問えば「負担は少ない方がいい」が多数を占め、「サービスが多い方がいいか・少ない方がいいか」と問えば「サービスは多い方がいい」が多数を占めるのは火を見るより明らかで署名の人数で政策の是非を判断すべきではない。
 竹下内閣が消費税を導入した時、無責任なマスメディアは国民の大ブーイングを煽ったが少子高齢社会となった今、消費税導入は大英断だったと評価できる。
 

 「マスメディアが国を誤った方向に導く事」は既に紀元前に韓非子が「口舌の徒(言うだけ言って責任を取らなくてもいい人達)が国を誤った方向に導く」と看破しているが、今年のサッカーW杯を振り返っても第3戦のブラジル戦に対してマスメディアはこぞって「奇跡が起こって日本が勝つ」と言っており、「冷静に分析すればブラジルに勝てない」と言ったマスメディアはない。大東亜戦争の時もマスメディアは「神風が吹いて日本が勝つ」と言った事を忘れてはならない。


2006年10月8日