【本当の子育て支援策とは?】
 5月15日にはさいたま市の市長選挙が行われるが、「子育てするならさいたま市」が市長の口癖になっている様に子育て支援策は相川市政の目玉の一つである。

 しかしながら、以前にも述べた様に、いわゆる児童虐待は子育て支援策が未整備の開発途上国よりも子育て支援策が整備されている先進国に多い。

 開発途上国では、自分の子供をセックス産業に売り飛ばすといった虐待はあろうが、実の親が自分の子を虐待して餓死させる様な児童虐待はむしろ先進国に特徴的である。そして、こういう児童虐待は私が小学生の頃には無かった様に思うが、その頃は日本も発展途上で、子育て支援策も、児童相談所も整備されていなかったのである。

 「児童虐待が開発途上国よりも先進国に多いのは何故か?」という事だが、医師の立場からこの現象を一言で言うと、「生殖は本能だが、子育ては学習である」という事に尽きる。

 チンパンジー等の動物の行動を注意深く観察すると子育てが本能ではなく学習である事が分かるのだが、つまり、親から充分な愛情を受けて育たなかった人間は自分が親になった時、自分の子にも愛情を注げない訳である。この事はアメリカのブラント・スティールという精神科医が詳細に分析して報告しており、当然例外もあるが、自分の子を虐待してしまう親は高率に自分自身も親から虐待を受けた履歴がある。

 我国でも昭和の頃までは子育ては親が、親の老後は子供が診た訳だが、今は子育ても、親の介護も行政の仕事になっている。私にはこの事と児童虐待とが無関係とは思えないのである。
 
 市長の子育て支援策に反対している訳ではないが、保育園に子供を預けてカラオケに行くお母さんもいる様だ。
 「3つ子の魂百まで」と言うが、3歳ぐらいまではできるだけ母親が傍に居るべきではないかと思う。そして、本当に支援が必要なのは保育園に子供を預ける事なく自分の家で子育てしているお母さんにではないだろうか?

 米国ではレーガン大統領の時に、英国ではサッチャー首相の時に個人主義(私)から家庭・家族(公)を重要視する方向に舵を切った事により、児童虐待や少年犯罪が減少したという。2005年3月の産経新聞に「米国ではキャリアウーマンが子育てに専念するケースが10年前に比べて19%も増えている」という記事が掲載されていた。

追記:我国では少子高齢化が急速に進み行政は少子化対策に頭を悩ましているが、少子化対策など講じていない開発途上国では逆に人口が増加し、人口抑制政策に頭を悩ましているのも皮肉なものだ。


            





2005年4月7日