2002年12月7日
真面目に働くよりも生活保護を受けた方が良い生活ができる国
 我国の夫婦と子2人世帯の所得税の課税最低限は384.2万円です。

 米国243.3万円、英国69.7万円、ドイツ327.8万円、フランス262万円に比べて高く、平成11年は勤労者層の約4分の1、およそ1510万人が所得税を払っていない実情から、課税最低限を引き下げる一案として配偶者特別控除(所得金額が1000万円以下で、生計を一にする配偶者の所得金額が76万円未満の場合、最高38万円までの控除が受けられる)の廃止が議論されています。

 「国民はすべからく納税すべきである」という基本的な流れは正しいと思いますが、生活保護給付額とのバランスが問題でしょう。

 ちなみに1級地―1と言われるいわゆる大都市の生活保護世帯の月額最高給付額は住宅扶助を含めると●夫婦と子2人の世帯:284650円、●子2人の母子世帯:255200円、●50歳の単身世帯:130220円です。

 さいたま市は1級地―1なので夫婦と子2人の生活保護世帯の年間最高給付額は約341.6万円となります。

 生活保護世帯の場合、社会保険料も所得税も免除され、万一、病気になっても医療費の自己負担もなく、タクシーで通院すればタクシー代も出ます。一方、課税所得が400万円程度の人は社会保険料も所得税も納め、医療費の自己負担分も払わなければならないので、下手に配偶者特別控除を廃止し課税最低限を346.2万円に引き下げると「真面目に働くよりも生活保護を受けた方が良い生活ができる」ことになり兼ねません。

 医師である小生が言うと「強者の論理だ」という批判がある事は甘受致しますが、真面目に働いて税金や社会保険料を納めた者よりも、生活保護を受けた方が良い生活ができる社会が健全といえるでしょうか?

 弱者に対する配慮を否定している訳ではない事を御理解頂きたいのですが、先日も風邪で受診したフリーターをしている若者に「将来どうするのか?」と訊くと「生活保護を受ければ遊んで暮らせる」という答えが返ってきました。

追記:年金も現行制度では真面目に年金保険料を納付して来た人が受け取る基礎年金が67017円であるのに対し、酒の飲みすぎで体を壊し年金保険料を納付して来なかった70歳単身世帯への生活保護給付額は住宅扶助を含めると月額142390円で2倍以上です。

 逆に生活保護は所持金が3万円以下にならないと受けられないのでわずかな年金を受給しているがために本当に必要な人が生活保護を受けられない事例もあります。

 社会保障制度の財源は保険方式よりも消費税の方が公平です。