2002年11月17日
北朝鮮のプロパガンダに容易に乗る日本のメディア
 フジテレビや朝日・毎日新聞が報じた横田めぐみさんの娘、キム・ヘギョンさんのインタビュウに続いて、週刊金曜日という雑誌が曽我ひとみさんの夫と子供のインタビューを報じた。

 これらの北朝鮮に残した拉致被害者家族へのメディア取材に対して論議が起こっているが、視聴率や雑誌の売り上げのためなら、北朝鮮のプロパガンダにも容易に乗る日本のメディアの姿勢には疑問を呈さざるを得ない。

 キム・ヘギョンさんのインタビュウは未成年者であるにもかかわらず、彼女の父親が同席して居ない事、あるいは祖父母の訪朝は求めるが「自分が日本に行って会いたい」とは言わないなどの不自然な点が指摘されている。

 横田めぐみさんの件が拉致問題の象徴の様に日本国内で報じられている事から、15歳の女の子に「おじいさん、おばあさんに会いたい。訪朝して欲しい。」と涙ながらに訴えさせる事で、拉致被害者の家族を動揺・分断させ、拉致問題の終結を企図した北朝鮮の戦術に日本のメディアが乗せられたという批判がある中、週刊金曜日は一時帰国者5人を北朝鮮へ返さない日本政府の方針を辛い葛藤の末に受け入れた曽我ひとみさんの気持ちを考えることもなく、同誌のスタッフ2人が曽我さん宅を訪ね、娘の美花さんが「早くお母さんに帰ってきてほしい」と語っている発売予定の雑誌を手渡し、「記事以外のことも知っているので、もし聞きたければ連絡を下さい」と伝えたという。

 これに対し、曽我さんは激しく動揺し、泣き崩れ、同誌の平壌での家族への取材を初めとする一連の行為に、「私は怒っている。」と明確に抗議の意を表したのは当然だろう。

 蓮池薫さんは、曽我ひとみさんの家族へのインタビュー報道について「北朝鮮で本当のことなんか言える訳がない。」と語っている。

 言いたいことがいえない国でのインタビューはまさに北朝鮮当局のプロパガンダ以外の何者でもないが、それを北の当局の意向通りに報道するのが、メディアの使命なのだろうか?

 週刊金曜日の編集委員には日頃から弱者の立場に立つことを装いながら、反日・親共産主義の論陣を張る落合恵子、佐高信、椎名誠、筑紫哲也、本多勝一の各氏が名を連ね、「むべなるかな」だが、彼らが事ある毎に「情報公開が重要」と主張するなら今回の取材に対し、北朝鮮側にいくらのギャラを払ったのか情報公開すべきだ。

 メディア規正法に対するメディア自身の反対の割には国民からの反対世論が盛り上がらないのは、現在のメディア報道の在り方に多くの国民が疑念を抱いているからである。

 自分のメシのネタを「国民の知る権利」とか、「報道の使命」とかを盾にして他人の迷惑を省みず取材報道し、最終的には無責任にも「視聴者・読者の良識に委ねる」などというメディアに自主規制を求めるのはまさに政治家に正直や誠実を求める様なものである。