2002年8月3日
株が下落してもビクともしない米国
 エンロン、ワールドコムの破綻をきっかけに米国株の下落が続いているが、お金も株券も所詮は紙切れである。上がったものは下がるという自然の摂理とエコノミスト・アナリストと称される人達が「いかに当てにならないか」が示されただけで米国はビクともしないだろう。
 
 「国は財政破綻しても滅びないが愛国心を失った国は滅びる」という言葉があるが、9.11テロの際、多数の若者が兵役に志願した事から分かる様に米国民の愛国心は強い。一方、日本では愛国心を「非」とする公教育が見事に花開き「国を守るために戦う」という若者は30%未満である。

 国際政治の舞台では発言権と軍事力は比例する。米国は為替レートをドル安にしたり、セーフガードを発動し、国内産業を守る事ができる。1985年に貿易と財政の双子の赤字に悩む米国が、日本の貿易黒字に業を煮やし、日本に超円高を呑ませたプラザ合意は記憶に新しい。急激な円高は日本の輸出製造業を直撃し、企業は企業内努力では経営危機を乗り切れず、生産拠点をコストの安い中国など海外に移転したため産業の空洞化が起こり、国内の失業増加と設備過剰が生じた。そして、日本はこのプラザ合意不況から未だ立直れていない。

 エネルギーについても米国は石油需要の42%を国内生産でまかなっており、その他「北中南米」からの供給が33%で、中東への石油依存度は10%に過ぎない。すなわち、米国は政情が不安定な中東からの原油が一滴も来なくなっても大丈夫な体制を堅持している。対照的なのは日本で石油需要の中東依存度は85%と高い。生命線ともいえる石油をどっぷりと中東に依存している日本は湾岸戦争のような事態が起これば、米国に「誰のために中東を守っているのか」と言われれば130憶ドルの戦費も拠出せざるをえない。

 塩野七生氏の「ローマ人の物語」の中に『軍役とは、国政参加の権利を持つ自由市民であることの責務以外の何物でもなかった。10分の1の税を払って軍務を免除されている属州民の方が経済的に考えるだけならよほど得であった』という一節がある。

 湾岸戦争の時に130億ドルを拠出しても軍役を果たさなかった日本が国際社会では全く評価されなかったのも当然で、軍役を他国に完全に依存している国はいくら金を持っていても国際政治の舞台では属州として扱われ、発言権は無い。

 更に、米国は食料も自国の分はガッチリ確保しており、中国が人口抑制政策に失敗した時の最終兵器は食料であると言われている。一方日本の食料自給率は40%に過ぎず、兵糧攻めに会えば一間の終わりである。 

 愛国心・軍事力・エネルギー・食料、どれを取っても米国は安泰であり、それに比べて日本の安全と豊かさが「いかに不確かなものであるか」が分かる。